平穏な愛の落ち着く場所
崇は客室のひとつで、今は何も置いていない
部屋の明かりをつけると、紗綾とクインを
下ろした。
『ちょっと、待ってろ』
玄関へ戻り、座り込んだ千紗を無視して
店員に言われるがまま揃えたペット用品
一式を持って紗綾の所へもどった。
仔犬を撫でながら、涙をこらえる紗綾の
姿に、たまらなくなる。
『大丈夫か?』
『おじさん、ままはわるくないから
もうままをおこらないでね』
ちくしょう、なんて娘だ……
この瞬間、崇の心はすっかりこの娘に
奪われてしまった。
『怒ってないさ』
『ほんとう?』
『ああ。もう少ししたらママもここへ来る
手伝ってくれるか?』
『うん』
崇は小さな手に、花柄の真っ赤な首輪を
渡した。
千紗はショックから立ち直ると、
自分の過ちを反省し、二人に謝ろうと
明かりのついた部屋へ、重い足取りで
向かった。