平穏な愛の落ち着く場所
『おまえ本気なんだな』
『ああ』
『崇』
『るせーな!そんな瞳で見んなよ、キモい。
いいから早く野口は何をしたのか言えよ』
千紗ちゃんの元旦那、野口元
あのろくでなしは男のグズだ!
『あいつの名前を聞くだけで胸くそ悪い』
浩輔は周りに女性(特に母親)がいないのを
いいことに、知る限りの罵りと嘲りの汚ない言葉を使って野口のこれまでの悪行を話した。
もちろん美しい妻が怒り狂っていた、つい先日の戯けた再婚話の訪問も。
『くそっ!八つ裂きにしてやる!!』
『喜んで共犯になろう』
『千紗は何であの男を庇うんだ!』
『一番は紗綾ちゃんの父親だからだろう
子供に父親を悪く思っていると思わせたく ないのさ』
『他には?いや、言わなくていい。
怯えてるんだな』
『あのタイプの男はキレたら何するか
わからないからな』
崇は立ち上がって、クインのリードを引いた
『どうするんだ?』
『千紗は俺が護る』
『一人で無茶するなよ、何かあれば俺や冴子 に言ってくれ』
浩輔はうなずいて崇の肩を叩いた。
『わかってる』
リードを引いて仔犬を連れて帰る崇の
後ろ姿を見ながら、浩輔は一人にやにやと
笑いが止まらなかった。