平穏な愛の落ち着く場所
『色男って言い方、いい加減やめないと冴子 に怒られるわよ』
『あら、色男は永遠に色男よ
浩輔さんその辺 劣化しなさそうだもの
それよりも千紗、どうなってるのよ?』
『どうって何が?』
『はんっ!!とぼけても無駄よ、
私が加嶋崇を忘れると思う?あんな危険な 香りプンプンのいい男を忘れるほど、
呆けてないわよ!
彼ったら相変わらずため息が出るほど
素敵じゃない?』
『ちょっと渚!』
千紗は小声でたしなめながら、慌てて店内を
見渡した。
二組いたお客さんは先ほど帰って、今は誰も
いない。
『彼とは何もないわよ』
昨日を思い出して赤面しそうな顔を、グラスを洗うことでうつむいて誤魔化した。
『あら、それならば、どうして
紗綾ちゃんのお迎えに彼がきたのか
説明してくれるわよね?』
やっぱり渚は気づいていたか。
千紗は口をすぼめて眉間にシワを寄せた。
『見覚えのあるイイ男が紗綾ちゃんを
抱いて歩いてるのを見て私がどれだけ驚い たと思う?女優並みに上手く隠してあげた けどね』
余計な詮索をしなかった私を誉めて頂戴
と、渚はコーヒーカップをつきだした。
え?抱いて歩いていたの?!
そんな時点から二人は打ち解けていたの?!
千紗は内心で驚いた。
『ちょっとしたアクシデントがあって……』
モゴモゴと歯切れ悪く言いながら、
おかわりのコーヒーを注いでも、
渚が諦めてくれるはずもなく
『ふうーん』
彼女は口角をぐいっと上げて、にやりと笑う。
『なっ、なに?』
『アクシデントねぇ?』
まったく……
渚の目を誤魔化すのは至難の技だわ。
『さっさと白状しなさいよ!』
『何もないわよ』
『無いわけないでしょう?』
『もうっ!!わかってるなら聞かないで!』
女友達……
それも親友に隠し事はできない
千紗は仕方なく昨日の事を色々濁しながら
話した。