平穏な愛の落ち着く場所
2.
披露宴は終始笑いのある温かいものだった。
親友の幸せそうな笑顔に、
千紗は無理をしてでも来てよかったと
心から思った。
二時間半ほどで披露宴は終わり、
二次会の案内がされている中、
千紗はホテルを出た。
ふと腕時計を見る。
『3時か、急げば駅前のタイムセールに
間に合うかしら……』
久しぶりに履いたヒールに、
踵の痛みを押さえた。
こんな靴で長い時間歩いたのは初めてかも。
『二次会には行かないのか?』
顔を見ずともわかる声の主に、
千紗は短くため息をついた。
『ええ、娘が待っているから』
『そうか、旦那が迎えに来るんだろ?』
千紗は、それに頷いて会話を終わらせる
事が出来なかった。
私の人生から、あの惨めな結婚生活を
消してしまえたら、この人との関係も
変わっていただろうか?
もし、あの頃の気持ちのまま
再会していたら……
そうだったらと考えて首を振った。
私には紗綾がいる、神様がくれた宝物。
どんなにやり直したい人生だとしても、
紗綾がいないなら、やり直せなくていい。
『私のことは平気だから』
『まさか?!駅まで歩くつもりじゃない
だろうな?』
『だとしても、あなたには関係ないことよ』
『千紗!!』
懐かしさに、思わず目を閉じた。
彼が怒ったように私の名前を呼ぶのが
好きだった。
家族でさえ、そこまで気にかけてもらえない
私をいつも心配してくれていた。
見かけはちょっと怖いけれど、
本当は照れ屋ですごく優しい人。
隠しても仕方ない……
千紗は短く息を吐いた。
『冴子から聞いてない?私、離婚したのよ』
『はっ?』
『シングルマザーは、あまり贅沢は
できないのよ、だから駅まで歩くわ。
さ、納得したらあなたは早く二次会へ
行ってね』
彼女は悲しそうに笑って、歩き出した。
『待て』
掴んだ腕の細さに崇は顔をしかめた。
どうするつもりだ?
と頭の中で警告がしたが、きっぱり無視した。
『送ってく』
『駄目よ、二次会へ……』
『冴子には、初めから二次会には
行かないと言ってある、仕事があるんだ』
『そう、なの?』
『だから遠慮しなくていい』
『でも……』
『どこか最寄りの駅まで、それなら
いいだろう?』
千紗は時間と交通費を天秤にかけた。
この時間だと、電車の方が確実に早く帰る
ことができる。
でも足が悲鳴をあげている。
ほんの一時間位座っていられたら、
娘に疲れた顔を見せなくてもすむ。
『頭の中で言い分けは済んだか?』
『えっ?!』
『なるべく急いでやるから、大人しく
乗っていけ』
『どうして?』
『おまえの考えは、昔から透けて
見えるんだよ!』
そう言って崇は、
掴んだ腕を引いて駐車場へ向かった。
親友の幸せそうな笑顔に、
千紗は無理をしてでも来てよかったと
心から思った。
二時間半ほどで披露宴は終わり、
二次会の案内がされている中、
千紗はホテルを出た。
ふと腕時計を見る。
『3時か、急げば駅前のタイムセールに
間に合うかしら……』
久しぶりに履いたヒールに、
踵の痛みを押さえた。
こんな靴で長い時間歩いたのは初めてかも。
『二次会には行かないのか?』
顔を見ずともわかる声の主に、
千紗は短くため息をついた。
『ええ、娘が待っているから』
『そうか、旦那が迎えに来るんだろ?』
千紗は、それに頷いて会話を終わらせる
事が出来なかった。
私の人生から、あの惨めな結婚生活を
消してしまえたら、この人との関係も
変わっていただろうか?
もし、あの頃の気持ちのまま
再会していたら……
そうだったらと考えて首を振った。
私には紗綾がいる、神様がくれた宝物。
どんなにやり直したい人生だとしても、
紗綾がいないなら、やり直せなくていい。
『私のことは平気だから』
『まさか?!駅まで歩くつもりじゃない
だろうな?』
『だとしても、あなたには関係ないことよ』
『千紗!!』
懐かしさに、思わず目を閉じた。
彼が怒ったように私の名前を呼ぶのが
好きだった。
家族でさえ、そこまで気にかけてもらえない
私をいつも心配してくれていた。
見かけはちょっと怖いけれど、
本当は照れ屋ですごく優しい人。
隠しても仕方ない……
千紗は短く息を吐いた。
『冴子から聞いてない?私、離婚したのよ』
『はっ?』
『シングルマザーは、あまり贅沢は
できないのよ、だから駅まで歩くわ。
さ、納得したらあなたは早く二次会へ
行ってね』
彼女は悲しそうに笑って、歩き出した。
『待て』
掴んだ腕の細さに崇は顔をしかめた。
どうするつもりだ?
と頭の中で警告がしたが、きっぱり無視した。
『送ってく』
『駄目よ、二次会へ……』
『冴子には、初めから二次会には
行かないと言ってある、仕事があるんだ』
『そう、なの?』
『だから遠慮しなくていい』
『でも……』
『どこか最寄りの駅まで、それなら
いいだろう?』
千紗は時間と交通費を天秤にかけた。
この時間だと、電車の方が確実に早く帰る
ことができる。
でも足が悲鳴をあげている。
ほんの一時間位座っていられたら、
娘に疲れた顔を見せなくてもすむ。
『頭の中で言い分けは済んだか?』
『えっ?!』
『なるべく急いでやるから、大人しく
乗っていけ』
『どうして?』
『おまえの考えは、昔から透けて
見えるんだよ!』
そう言って崇は、
掴んだ腕を引いて駐車場へ向かった。