平穏な愛の落ち着く場所
『千紗!?』
腕を擦りながら去っていく野口を呆然と見ていた千紗は、自分を呼ぶ渚の声でハッと
我に返った。
『なぎさ……ごめん、だいじょ……』
『馬鹿!!大丈夫なはずないでしょ!』
コツンと軽い拳骨が頭に当たった
痛くないけれど痛いそれは、
いつも現実を思い知らされる……
そうよ、渚の言う通り
このままでは紗綾が不幸になってしまう
どうしよう、どうしよう、どうしよう!!
『渚、紗綾が…野口が紗綾を奪おうとするの
どうしよう……あぁどうしよう……』
解決方法が見つからない
どうしたらいいの?
紗綾が、私の紗綾が……
目の前がさっきより激しくグルグルと
回りだした
『千紗、落ち着いて!』
落ち着く?
どうやって?
あの娘がいなくなってしまうというのに!
目を閉じてもグルグルと渦が回っていた
よく見るとその渦の中で紗綾が必死に手を差しのべて、私を呼んでいる
[紗綾!!]
待って!ママが必ず助けるから!
[ままーー!!]
あと少しで手が届く瞬間、紗綾は渦に飲み込まれてしまった
『いや…嫌よ……イヤァー!!』
『千紗っ!!』
千紗は叫んで意識を手放した。