平穏な愛の落ち着く場所
ベッドに下ろされて、離れようとした彼の
胸のシャツを掴んだ。
『ダメ!嫌よ!お願い!
あの娘を迎えに行かないと!!
連れて行かれるかもしれないの!』
『落ち着け』
シャツを掴んだ手の上に彼の大きな手が重ねられた。
『誰もおまえからあの娘を奪ったりしない』
ぎゅっと握られて、なだめるように甲を親指が上下する。
『ほんとう?大丈夫なのね?』
彼は私の瞳を見て強くうなずくと、
シャツを掴む手を剥がして私の身体をベッドに横たえた。
『ああ、あの娘は無事だから安心しろ。
クインと一緒に蒼真の所に預けた』
『え?』
『しおちゃんのママも家で、と言ってくれた んだが、蒼真の家のがセキュリティーが
しっかりしてるからな』
セキュリティー……
冷静に考えてみれば、今日野口が紗綾を
連れて行く可能性は低いけれど、
ないわけではない
反抗した私に嫌がらせするためにしかねない
さすがに結城さんのお宅にいるなんて、
野口も思わないだろうし、例え気づいても
お屋敷には簡単に近づけないだろう……
そうね、安心できる……でも、
他所に一人で泊まったことがない紗綾は
いきなり知らないお宅で大丈夫かしら?
ううん、きっと不安なはずだわ
『私やっぱり…あっ』
起き上がろうとしたら、布団の上から抱きしめられてしまった。
『頼むから大人しくしてくれよ……』