平穏な愛の落ち着く場所
受付で教えてもらった個室にかけつけると
蒼真と紗綾がしおちゃんのママだと言って
いた女性が応接セットに座っていた。
『今点滴で眠っている』
ベッドを見ると管をつけた青白い顔の千紗が
眠っている
ちくしょう!
一体何があったんだ!
今朝は怒ってはいたが、倒れるような体調の
悪さは見られなかったぞ!
『何があった?……まて、あの頬……』
彼女の頬が腫れているのに気づき
目の前がカッと赤くなり、燃えるような怒りが込み上げてきた。
『あの男だな!』
『気持ちはわかるが、ここは病室だから
落ち着けよ』
落ち着けと言われて落ち着けるほど
簡単な怒りではない。
深く深呼吸して、何とか声を絞り出す。
『蒼真、なぜおまえが?』
『たまたま教室の帰りにあそこを通ったんだ そしたら、揉めてる男女がいてさ。
最初は関わらないつもりで通りすぎようと して何気なく見たら男が野口だと気づいて
慌てて駆けつけたんだが……すまない、
一発目は間に合わなかった』
『それで倒れたのか』
『いや、その時は気丈にしていたが
どうやら親権を争うらしい』
ガシャン!!
花を飾る為の壺が大きな音をたてて床に
落ちた。
『何してるんですか!!
千紗が起きてしまうでしょ!』
しおちゃんのママの声にハッと慌てて
千紗を見るが、薬のせいか起きる事なく
死んだように眠っていた。
『ここが何処か考えて!』
しおちゃんのママが母親の口調で
俺たちを叱って片付け始めた。
『俺は注意したんだが……』
蒼真はボソッと言ってホウキとちり取りを
借りてくると出て行った。