平穏な愛の落ち着く場所
『色々ごめんなさい』
千紗は布団から半分だけ顔を出した。
瞳の奥が熱くなる
『なぜおまえは……』
謝らなければならないのは俺の方だ。
例えあの時、
結婚するつもりがなかったとしても
俺が少しでも正直になって気持ちを
さらけ出してさえいれば、
おまえは結婚を止めていたはずだ
そうしたら今のおまえは……
『崇さん?』
言葉に詰まる俺を心配した千紗の顔が
不安そうに曇った。
『怒ってる?』
怒っているのはおまえだろう?
昔のようにおまえを求めた身勝手な俺を。
『俺が何を怒るんだよ』
『今朝言ったこと……』
『……怒ってなどない』
おまえは懐かしさや同情で俺を押しきれなかっただけ
今さら俺のことなど愛せるはずかない
『後悔してるんじゃないの』
その言葉に心底安堵した
それだけ聞ければ十分だ……
俺はこれからおまえを本気で護る
俺の手で幸せにしてやれなくても
もう一度おまえがあの頃のように笑って
過ごせるように
『でも……』
薬が効いてきたのか、うとうとしながら
話そうとする千紗の髪を優しくといた。
『わかってるから。今はゆっくり休め』
『崇さん……わたし……』
『しぃーっ眠るんだ』
崇は枕元の照明を落とした。