B - Half
「母さん! 辻穂波のこと、知ってるの!?」

 叫んだのは、しよりが先だった。

 反応の早さが、さすが天敵。

 俺はと云えば、『花だと思って見ていた絵が狼だった』、みたいな気分になっていた。

 瞳に映るもの全てが、ぐらりと傾いでかたちを変えていく。

 足元がおぼつかなくなる。

「あら、しよりも知っているの?」

 俺たちの混乱をよそに、さよこ叔母はおっとりと首を傾げた。
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