B - Half
「去年の春頃だったかしら。

 いきなりね、キョウくんが『アルバイトがしたい』って、云い出したの」

 懐かしそうに、さよこ叔母が話し出した。

「きちんとしたところだから、ちゃんと保護者の許可を取らなきゃダメだからって。

 それで、キョウくんと一緒に、バイト先にご挨拶に行ったの。

 そのお店が、【Augasta】」

 さよこ叔母は、そこでお茶を一口。

「そんなの、全然知らなかった……」

 しよりが、呆然とつぶやく。

 しよりの気持ちは、よくわかる。

 あの頃、俺たちは四六時中一緒で、一緒にいることが普通で、『知らないこと』=『ありえないこと』だと思っていた。

 子供っぽい思い込みの絆で、つながった三人。

 その見えない輪を、さよこ叔母の語る『過去』がほどいていく。

 幻想が、暴かれていく。
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