B - Half
・3・
蝉の声が、やまない。
重なり続ける音が、余計に沈黙を浮かび上がらせる。
正座をしたままのしよりは、人形のような無表情。
俺はと云えば、古いガラスごしの空に、あるはずのない答えを求めていた。
『だまされていたのか』、と思う。
同時に、『だます』ってなんだろう、とも思う。
あいつは、黙っていただけだ。
一年前の夏の始め、交通事故で死んだ俺の片割れ――菅坂馨也との関わりを、喋らなかっただけ。
なにひとつ口にせずに、ただ、『好きだ』とささやいた。
――それだけのことで、なんでこんなに胸がきしむんだろう。
重なり続ける音が、余計に沈黙を浮かび上がらせる。
正座をしたままのしよりは、人形のような無表情。
俺はと云えば、古いガラスごしの空に、あるはずのない答えを求めていた。
『だまされていたのか』、と思う。
同時に、『だます』ってなんだろう、とも思う。
あいつは、黙っていただけだ。
一年前の夏の始め、交通事故で死んだ俺の片割れ――菅坂馨也との関わりを、喋らなかっただけ。
なにひとつ口にせずに、ただ、『好きだ』とささやいた。
――それだけのことで、なんでこんなに胸がきしむんだろう。