B - Half
「げ」

 心臓が止まるかと思った。

「はじめまして、コウヤくんの従姉の華月しよりさんですよね。1―9の辻穂波です。先日からコウヤくんの彼女をしていますう」

 乱入した穂波は殊勝な顔をして、丁寧すぎるお辞儀をひとつ。

 腰の角度は90度。

 ふわり、ゆるパーマ髪が揺れる。

「また勝手な自己紹介を…そもそも、『あたしの』ってなんだ?」

 俺の抗議は黙殺。

 にっこりにこにこ、笑顔の穂波に、しよりもにこやかな笑顔をつくる。

「へえ、新入生なんだ」

「ハイ! 書道選択です! おねーさんは、あ、おねーさんでいいですか? 年上なんでついつい」

「別に気にしないわよ。どうぞ」

 新入生⇒ガキ。

 おねーさん⇒ババア。

 女子高生の文字変換システムは、ときおり容赦ない。

 穂波としより、完全にメインの俺を無視。

 満面の笑みを浮かべながら、ぎりぎりにらみ合っている。

 ――と。

「あ」

 ポン、と唐突に、穂波が両手を打った。
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