B - Half
「しぃ?」

 ぱたり、とひとつぶ、ぬぐいもしない涙が、しよりの白い頬から、押し倒された俺の鎖骨に落ちる。

 しよりは、唇を寄せて、その滴を舐め取った。

 そのまま、きつく歯を当てる。

「いっ……」

「でも、泣き落としでいいわ。

 せっかくだくだく、勝手に溢れてくるんなら活用してやる。

 コウが落ちてくれるなら、なんでもいい。

 コウ、お願い」

 指先で、俺のシャツのボタンを外して、しよりがささやく。

「あたしを選んでよ、コウ。

 あたしの傍にいて。

 あたしだけのものになって。

 ここから、いなくならないでよ」
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