B - Half
 俺は無言で、彼女の横をすり抜けた。

 ガラスの扉の向こう側は、空調が効いていて涼しい。

 なのにこいつは、扉の外で待っていたんだな、と思うと、微妙な気持ちになった。

「コウヤくん、聞いてください」

 ぱたぱたと、華奢なサンダルが立てる足音。

 振り返らずに、暗証番号を押して内扉を開ける。

 小さな溜め息を吐いて、彼女が、コウヤの背中に紙袋を押し付けた。

「コウヤくんが置いていった、コウヤくんの私服。届けに来ました。

 あたしがもらっていると、不浄な目的に使っちゃいますよ?」

「……ッ!」

 思わず振り返ると、彼女がふにゃりと笑った。
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