B - Half
「そうそう、こうしてる場合じゃないです」

 次の瞬間、するりと、腕を取られる。

 ひんやりとした、穂波の肌の感触。

「へ?」

 目を丸くして見返すと、穂波はふんにゃり、当たり前みたいに笑った。

「あたしのコウヤくん、もらっていきますから。ではご機嫌よう」

 1ミクロンの隙間もなく言葉を積み上げて、最後に全部ぶったぎるように音速で一礼。

「ちょ……ッ!」

 しよりが怒鳴ろうと、口を開けたのが最後。

 あぜんとしたしよりを残し、穂波は俺をひきずり一目散に走り出した。
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