B - Half
episode9: without you
夏のなごりが、カレンダーを1枚、ぺらっとめくるだけで消える気がするのは、なんでだろう。
それでも、夏の色の褪せた暑さにへきえきしながら、学校まで歩く。
HRのドアを開けると、夏休みの余韻でふわついているものの、なにひとつ変わらない教室の風景。
「よお、菅坂。ひっさしぶり」
真っ黒に焦げた五桐に片手をあげて、ゆっくりと教室を見渡す。
相変わらず埃っぽい空間。
角が欠けて剥げたタイル。
くすんだ窓の桟とガラス。
笑い声をあげる白いシャツの群れ。
つまんない日常と、つまんない教室。
情けねえけど、ちょっとほっとした。
逃げ場が、ないわけじゃないんだって。