B - Half
 しよりとは、『あの日』以来会っていない。

 自慢の従姉。数少ない血縁。

 なによりも、三人の――ふたり。

 馨也が死んで、この一年。

 俺としよりは、注意深く距離を取って暮らしてきた。

 馨也といたときの、手のひらを重ねれば全てがわかってしまいそうな、親密な距離感。

 それは馨也が死んだ瞬間にかたちを変えて然るべきだったのだけど、俺もしよりも、それを許さなかった。

 だから、その瞬間で冷凍保存。ふたり、離れた。

 言葉にしなかった、約束。

 それが、あの日――壊れた。
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