B - Half
 正直、しよりには会いたくなかった。

 合意の上なのに、大した卑怯者だと思うけど、しよりをちょっと恨んでる。

 新しい関係なんて、いまさら構築できない。

 だから、逃げてる。

 しよりの知らない場所に。

「結局、なくしてくばかりじゃん」

 三人がふたりへ。

 ふたりが――ひとりへ。

 呟いてから、『そうじゃない』と云い切ったオンナがいたことを思い出す。

「嘘つき」

 罵った言葉は、やけに甘ったるい響き。

 まるで、『彼女』を非難すれば、『彼女』が反撃しに来る。

 それを期待してるみたいだ。

 ――最悪。

 見上げた壁の時計は、五時五十分。 

 一応、引き受けたことはこなすかと、俺は重い腰を上げた。
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