B - Half
 ぐるりと昇降口から校舎を回り、通用門に向かう。

「少年! 菅坂少年! おいそこの!」

 校舎脇の、手入れの悪い道の雑草を踏み付けていると、どこからか声が降ってきた。

 あまり馴染みのない、オトコの声だ。

 きょろきょろと、視線を平行移動させる。それらしい奴はいない。

「気のせいか」

 決め付けて、また歩き出そうとする。

「ちょっと待て! 菅坂香也!

 上だ上!」

 云われるまま、視線を持ち上げる。

「……」

 多分、俺の顔ははっきりしかめられていたと思う。

 丁度真上。校舎の三階の窓が開いて、そこからむさくるしいヒゲ面が覗いていた。

「辻、先生……」
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