B - Half
episode10: be half
『好き』だとか。
『嫌い』だとか。
みっともなく慌てて、振り回されて――ダマされて。そんなマヌケな自分なんて、知りたくもなかった。
思えば俺は、1年前の夏まで、『俺』がどんな生き物かなんて、考えたことがなかった気がする。
隣りに同じ輪郭の『俺』――馨也がいて、いいも悪いも嫉妬も愛情もなにもかも、そこから差し引きすればOK。
真っ平らな場所で、ゼロから気持ちを組み上げたことなんて、ない。
つまり、こんな云い方が許されるなら。
馨也が死んで、『俺』が生まれた。
そして、恋をした。