B - Half
「と見せかけて、弱ったコウヤくんに、付け込むために。

 孝ちゃん先生、いい仕事をしたな、って、正直思いました。

 だって、鉄壁の守りのコウヤくんになんて、あたし、勝てないですから」

 しゃらりと云い放って、穂波は椅子に戻ってくる。

「云いたいこと、云うなあ」

「だって、こういう性格なんです、あたし」

 穂波はピンクの唇の両端を吊り上げ、きゅっと笑みをつくる。

 可愛らしい容姿を裏切るふてぶてしさに、懐かしささえ感じた。

「威張ることかよ」

 ずりずりと背中を持ち上げて、上体を起こした俺を、穂波はまっすぐに見つめた。

「そんなに長くしないよう、努力します。

 あたしの話を、聞いてくれませんか?

 菅坂、コウヤさん」
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