B - Half
 準備室のなかは、長く掃除をしていないのか、湿った臭いがした。

 薄く埃が舞うなかで、遠くにチャイムの音を聞く。

 穂波と一緒に消えた俺に、さぞ話の尾ひれがついていることだろう。

 ……いっそ帰るのがおそろしい。

「きちゃないとこですみません。そのへん、座っておいてください」

 落ちかけの俺を尻目に、マイペースの穂波が、無理やり詰め込んだ感のあるソファをゆびさす。

「どーぞ」

 小さな冷蔵庫取り出された、百均でしかお目にかからないようなマイナーメーカーのジュース。

 手のひらにおさまる缶の、冷えた感触が心地好かった。
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