B - Half
・3・
「菅坂氏が、好きなの?」
キョウをほとんど知らない貴子さんが云う『菅坂』⇒コウのこと。
貴子さんがそう呼ぶたびに、不思議な気分になる。
こうやって、『キョウ』がいなくなるんだって、ほろ苦い実感が募ってく。
「好きよ」
即答できる。
でも、貴子さんはあたしの回答を鼻で笑った。
「でも、『好き』じゃないのよね?」
こっくり、子供みたいに小さく、うなずく。
貴子さんの綺麗に磨かれた爪が、カップの縁をなでる。
「菅坂弟が、好きだったの?」
キョウをほとんど知らない貴子さんが云う『菅坂』⇒コウのこと。
貴子さんがそう呼ぶたびに、不思議な気分になる。
こうやって、『キョウ』がいなくなるんだって、ほろ苦い実感が募ってく。
「好きよ」
即答できる。
でも、貴子さんはあたしの回答を鼻で笑った。
「でも、『好き』じゃないのよね?」
こっくり、子供みたいに小さく、うなずく。
貴子さんの綺麗に磨かれた爪が、カップの縁をなでる。
「菅坂弟が、好きだったの?」