B - Half
 俺しかいない場所でなら、しよりは、俺の言葉に耳を傾けるのかな。

 俺の言葉は――俺の想いは、意味を持つのかな。

 バカな俺は、自分のセリフという壷の口から溢れ出す想像の水に、簡単に溺れてしまう。

 しよりは、掴まれた腕を振り払いもせず、じっと俺を見つめていた。

 くっきりとした漆黒の瞳は潤み、少し歪んだ俺を映し出す。

 淡く色付いた唇が、開く。

「別に、いいわよ」
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