B - Half
 ――『一生』。

 しよりが差し出したその言葉の、堅くて重い手触り。

 触れて感じる冷たさと――怖さ。

 怖いと思った瞬間、自分の存在が、小さく小さく、縮んでいく。

 俺は、情けないことに、ひるんでしまった。

 バカみたいに正直に、怯えを瞳に載せてしまった。

 ――それが、おしまいの合図。

 ふっと、しよりが息をはいた。

「帰ろう、キョウ」

 ぽんぽん、と軽く、肩を叩かれる。

 ――ゲームオーバー。

 そう云われた、みたいだった。
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