B - Half
「コウヤくん、一年のときの数字のせんせ、誰だったんですか?」

 懲りずに、穂波がたどたどしいシャープペンの手を止める。

「なんで?」

 夢想を破られ、自分でも驚くほど、不機嫌な声が出た。

 ――そもそも、なんで当人よりも俺が真剣にならなきゃいけないんだ。

 いっそ捨ててやろうか、この野郎。

「別に、サボろうなんて思ってません!」

 俺のかもしだす不穏な空気に気付いたのか、穂波が慌てて首を振る。

「誰もいない教室にふたりきり。これはなにやらイイ感じになりそう! って期待したのに、予想外にスパルタで、かなりガッカリなんて、思ってもないですし!」

「口走ってるぞ」

「…まあそれはさておき」

 放り出されたポッキーの箱を拾いあげ、穂波はワイロよろしく箱を傾けてくる。

 仕方ない、と深い溜め息をひとつ。

 一本引き抜いてくわえれば、チープだけどやわらかい甘さ。
 
 なんとなく、穂波に似てる。
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