B - Half
 すとん、と無造作に、しよりが俺の前に座り込んだ。

 紺色の、やぼったい制服のスカートからのぞいた滑らかな膝が、裸足の爪先に触れる。

 俺のジーンズの膝に、細い指が乗せられた。

「謝るなら、別の方法にして」

 自然に、唇と唇が触れ合う。

 随分と、久しぶりなキスだった。

 考えてみれば、俺としより、それに『あいつ』は、随分と簡単に、手を繋ぐよりもキスをしたものだった。

 もちろん、その延長線上で、それ以上のことも。

 濃密な関係ほど、壊れた瞬間修復がきかなくなる。

 『あいつ』がいなくなって、俺はしよりに、しよりは俺に触れることをやめた。

 壊れたパーツはいくらくっつけても、元通りにならない。

 無駄な作業は、お互い、余計むなしくなるだけだから。
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