B - Half
 鍵が壊れて行き来自由になった、屋上。

 遮蔽物がなく日当たりが好すぎて人気のないコンクリートの上が、最近のランチスペースだ。

 とりあえず、ここならクラスメートの冷やかしもない。

 束の間の平穏無事だ。

「はい、今日はラブラブ肉食弁当です!」

「ラブってなんだ、ラブって。肉食弁当ってなんだ。俺は恐竜か……」

 呟きながら、差し出された弁当のフタをあける。

 なるほど。

 『ラブ』はご飯の上に大胆に描かれたそぼろのハート。

 『肉食』はメインの骨付きフライドチキンのことらしい。

「そこで納得するようになっているのも、どうかと思うんだよなあ……」

 慣らされ馴れまくった自分に、ひとり突っ込みくらいは入れておく。

「なにか云いましたかあ?」

 手元の水筒からお茶を注ぎながら、穂波が振り返る。

「いや、なんでもないです……」

 釣られて敬語。己の環境順応力が憎い。
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