B - Half
「どうした?」

「ん、これ」

 しよりの手から、俺の手のひらへ。

 濃紺の小さな紙袋が落とされる。

「今日、誕生日でしょ?」

 しよりは、ちょっとふてきされたような、変な顔をしていた。

「ありがとな」

 礼を云う俺も、きっと同じような顔をしている。

「今日、帰りにうち寄ってくれない?

 さよこさんも、なんか仕込みをしているみたい。

 あんたが来ないとふてくされる」

「了解」

 目的は達したばかりに、しよりはさっさと立ち上がる。

 そのままスタスタ三歩歩いてから、ふと、ちょっと迷うように振り返った。

 俯いた白い顔に、絹糸のような綺麗な髪の陰。

 かすれた声で、ささやく。

「誕生日、おめでとう」

 そのまま、俺の反応を待たずに歩き出す。

「ありがとう」

 呟きは、自分にだけ奇妙な重さではねかえる。

 しよりの背中を見送ってから、俺は、抱えた膝に突っ伏した。
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