B - Half
 錆び付いて鍵がかからなくなったドアを押して、屋上に出る。

 ひゅっ、と昼の熱気が冷めた、夕方の風にあおられた。
 パタパタと、ゆるく結んだネクタイがひるがえる。

「穂波?」

 呼び出しの張本人は、こちらに背を向けて、床にひざまずきなにやら作業中の様子。

 気付かないのをいいことに、こっそりにじりよる。

 とどめに、無防備な背中を一撃。

「なにやってんだ!」

「にゃあぁッ!」

 予想以上の反応と――悲鳴。

 べしょ、と穂波の手許で、哀れな音がした。
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