B - Half
「げ」

 のぞきこむと、穂波の手が、作業の中心――白いクリームの中央に沈んでいる。

 丸くて白い、いちごで飾られたやや、いびつなかたちのケーキ。その中央に、こちらは見事な手形の穴。

 周囲にパラパラ散らばった、色とりどりのろうそくが、哀れを誘う。

 穂波はパクパクと、酸欠の魚のような顔で、俺と無残な塊を見返していた。

 完全に、リアル涙目。

 軽い気持ちがなした予想外の成果に、目が右に左に、泳ぐ。

「まあ……取り敢えず、悪かった」

「……ッ!」

 あんなにやかましい穂波の声が、声になっていない。

 かなりのダメージと見える。

 ――さて、どうするか。

 アタマが考えているすきに、俺の手は勝手な動きをした。
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