B - Half
 穂波の細い手首を取って、顔に近付ける。

 穂波の指先にべったりくっついたクリームを、舌でなめ取った。

 舌先で感じる、穂波の肌の温度。

 ――甘い。

「――ッ!!」

 穂波が、フリーズした。

「うまい」

 にやりと笑って、穂波の反応をうかがう。

 気持ち的には、花火か爆弾か。破裂するのを期待するのは、かなりのバカかも。

 にやにや笑いの俺に、じわじわと穂波の頬に血が上る。

「……やしい」

「ん?」

 掠れた声を拾おうとした俺の襟首に、穂波はいきなり飛び付いた。

「くやし―――ッ!

 せっかくのケーキ!

 朝から授業全部サボって焼いた力作!」

「……授業は出ろよ、高校生」

「そんなのいまは問題じゃないです! んもうッ!」

 穂波はぶんぶん首を振って、やけくそになったように、元・ケーキの塊を俺に突き付けた。

「誕生日おめでとうございます!」

 真っ赤になった顔に、俺は笑いをかみ殺した。

「……どうも」

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