B - Half
 穂波の勢いに押されて、すとん、と俺は腰を下ろす。

 正座をしてしまった俺の前に、お供え物のように無残なケーキ。

 取り敢えずと、俺はろうそくと一緒に転がっていたスプーンを拾った。

「ダメです!」

 ケーキに突っ込もうとした途端、穂波の『待った』が入る。

「そぉんな簡単に食べちゃダメです」

「簡単にって……」

 困惑する俺を無視して、穂波は、さくっと手形をよけて、ケーキをひとすくい。

 満面の笑みで、スプーンを差し出してくる。

「はい、あ~んしてくださ~い」

 ――バカだ、こいつ。

 『にっこり』よりも『にやにや』要素の強い穂波の笑顔に、あきれる。

 だけど。

 こいつといると、退屈しない。大騒ぎして、混乱させて、悩む余白なんて与えてくれない。

 ――俺には、なんて上出来な『彼女』。

「はいはい、『あ~ん』な?」

 俺が素直に口を開けるのを見て、自分でしかけたくせに穂波は目を丸くして――。

 くしゃりと、無邪気に全開の笑顔を見せた。
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