B - Half
紅潮した顔で俯く海樹を、俺はいやに冷静な気分で見下ろしていた。
海樹が云うのは、綺麗な絵空事だ。
俺には、そう感じる。バカらしいとも思う。
取替えがきかない奴なんていない。
いなくなってしまえば、そいつの抜けた穴を必死で埋めようとする。
そうしないと――怖くて、痛くて生きてなんていられない。
「それでも……俺は、穂波が『好き』だけどね」
彼女が、俺の『半分』になってしまった世界をぐちゃぐちゃにしてくれることを、期待している。
それが、海樹の云うところの無心な『好き』ではなくても。
「云ってろよ。それに」
キッ、と顔を上げて、海樹は吐き捨てた。
「俺は、あんたの顔が、大嫌いなんだよ」
――その一言が、鍵だった。
海樹が云うのは、綺麗な絵空事だ。
俺には、そう感じる。バカらしいとも思う。
取替えがきかない奴なんていない。
いなくなってしまえば、そいつの抜けた穴を必死で埋めようとする。
そうしないと――怖くて、痛くて生きてなんていられない。
「それでも……俺は、穂波が『好き』だけどね」
彼女が、俺の『半分』になってしまった世界をぐちゃぐちゃにしてくれることを、期待している。
それが、海樹の云うところの無心な『好き』ではなくても。
「云ってろよ。それに」
キッ、と顔を上げて、海樹は吐き捨てた。
「俺は、あんたの顔が、大嫌いなんだよ」
――その一言が、鍵だった。