魔法のチーズ・ケーキ
「この古地図に関して
私ができる説明は
今の話くらいだろう。

少しでも・・・
キミの役に
立つといいのだが」

教授はそう言うと
さっきまで出していた
厚く古めかしい研究書の
ほこりを丁寧に払い
また本棚の闇へと
戻していった。

「さて、宿はもう
決めてあるのかね?」

「それが・・・着いたばかりで。

あわててこちらの
お宅に着たものですから」

「ああ、それなら」

教授は髭の端を
ピンとつかんで

「ちょうど一部屋
余っているから
泊まっていくといい」

もちろん夕食も
用意するよ、と

教授は気さくに笑う。

恐縮です、
ぺこりと頭を下げると

「ああ、そうそう

せっかくこの冬日町に
来たのだから、
あれを食べていくといい。

ここには、実に旨い
チーズ・ケーキをつくる職人がいるんだ

なんていったって、
あのケーキは
一度食べたら忘れられない味だからな」
< 2 / 68 >

この作品をシェア

pagetop