RUNA戦記Ⅲ~水晶宮に眠る竜~





 かすかに、兄の声が聞こえた。


 ゲルブは、ルナを見た。


「よし、行こう」


               ★


 さっき、ダズル—ゲルブの兄に言われた言葉をルナは思い出していた。


—ゲルブが背中に鼻をつけてきたら気をつけて。甘えられちゃうから。


 一体、どういう意味なのだろう。

 何故、それを私に話したの?

 
 ふと、ゲルブに目をやると、ゲルブはまだ泣いていた。


 ルナは、彼を、そっと抱きしめた。


「つらかったよね、ゲルブ。でも、もう、大丈夫だよ…ゲルブ。ずっと、私がそばについているから」


 彼が、ルナの耳元に顔をうずめ、また涙した。









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