ベイビー&ベイビー
プロローグ
プロローグ
「拓ちゃん、綺麗だねぇ」
「本当だね。桜の花びら、集めようか!」
「うん」
そう言ってその幼き女の子の手を取って、僕は公園に向かう。
桜色のジュータンに、その女の子と一緒にゴロリと寝転がる。
「拓ちゃん、もう東京に帰っちゃうの?」
「うん、そろそろ新学期が始まるしね」
「そっかぁ。じゃあ、夏休みにはまた会えるかな?」
「うーーん、来たいと思うけど。今年からはどうなるかわからないんだ」
「どうして?」
悲しそうに僕の顔を覗き込む女の子。
僕は困って、その女の子の頭を撫でた。
「3年生になると、色々忙しくなるんだって。だからこっちにも来れないかも」
「そっか…」
「うん、ごめんね」
「じゃ、もしかしたら今日が拓ちゃんと会うの最後かもしれないの?」
「……」
言葉にするのが辛くて、僕は無言で頷いた。
その様子を見て、その小さな女の子は泣きそうに笑った。
「私、拓ちゃんのこと大好きなんだ。だから大きくなったら拓ちゃんの所に行ってもいい?」
「大人になったらいいよ。そうすればお父さんやお母さんに着いて来てもらわなくても大丈夫だし」
「本当!?絶対だよ。私、会いに行くからね」
「うん、待っているね」
そう返事をした僕を見て、嬉しそうに笑う女の子。
「絶対に私のこと、忘れないでね!」
「うん、約束だよ」
「約束!」
硬く小指と小指を絡ませて、僕たちは約束をした。
叶うかどうかわからない。
子供同士の小さな約束……。
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