ベイビー&ベイビー
第3話
第3話
「あら、拓海。珍しいじゃない、こんなところで会うとは思わなかったわ」
「まあね」
俺は目の前の真理子を見て肩を竦めた。
今日はある大物政治家のパーティーに来ている。
いつもならこういう仕事絡みのパーティー関係は、祖父である会長か父である社長が行くことになっているのだが
今回は特別に俺が行くことになった。
基本、まだ俺は沢商事で営業として働いているため、仕事がらみでこういったパーティーに参加をするのは実は珍しい。
しかしながら、今会長はドイツで契約の仕事で飛んでいってしまっているし、社長はNY支社でトラブル発生してしまい飛行機に乗って飛んでいってしまった。
と、なると俺しか残っていないわけで。
九重代議士はうちとは遠からずの縁なので、欠席というわけにはいかない。
九重と祖父は幼馴染の間柄。だから俺のこともよく知っているというわけで、出席しないわけにもいかない。
こういう席なら沢商事の会社のものたちはこないから安心といえば安心だが、パーティーはいろいろめんどくさいから出来れば出席などしたくはなかった。
「真理子さんは九重さんと知り合いなのか?」
「まあね。いろいろ大人な付き合いがあるのよ」
そういって煙に巻くように笑う真理子。
さすがに根掘り葉掘り聞こうなんて思っていないから、そのままその場は流した。
すると九重がこちらのほうに歩いてきた。俺は真理子さんにじゃあ、と言葉を交わすと今日の主役の九重卓三の前に歩み寄った。
「九重さん、ご無沙汰しております」
「おお、拓海か。久しぶりだな。相変わらず猫かぶってやってるのか?」
「猫なんてかぶってませんよ?」
「ふん、年寄りの目をごまかしてもらっちゃ困るな。今日は久しぶりにお前の爺さんに会えるかと思って楽しみにしておったが仕事か?」
「はい、ドイツに飛んでいってます」
「ここにお前がいるってことは、お前の親父は仕事か?」
「ええ、今朝方NYからトラブル発生の電話がかかってすっとんでいきましたよ」
そういって苦笑すると、目の前の九重はおかしそうに笑った。
「で。今日は拓海の出番だったというわけか」
「そういうわけです」
「そういえば、いつ戻るんだ?」
九重が言いたいことはわかっている。
sawa本社の重役のイスにいつ座るつもりなのか、と聞きたいのだろう。
目の前の九重を見て苦笑した。