ベイビー&ベイビー
第5話
第5話
「拓海くんと、こんな立派な料亭に来るなんて思わなかったわぁ」
「確かに」
そういってほんわかと笑う明日香に同意して、俺も笑った。
ここはパーティー会場からすぐのところにある「つじわき」。
あの爺さんからの好意だということで、明日香とこうして食事をとることにした。
好意なのか、興味なのか、好奇心なのか。
どれが正しいのか疑問だが、とりあえずはおいしい料理をいただけたということで感謝しよう。
この「つじわき」予約が一年以上前じゃないと取れないと聞いたことがある。
そこはやはり大物代議士「九重卓三」。
この名前を出すだけで、予約枠を開けてしまうなんてさすがだ。
俺たちが九重卓三の客だとわかり、それはそれはこれ以上ないぐらいに丁寧なもてなしを受けた。
そうでなければ、こんな幼い顔立ちの若者には敷居が高すぎるし、こんな扱いも受けれないことだろう。
幼い顔立ちだが、一応俺たちは立派な大人の粋には入っていると思う。
考えてみれば、二人はそれなりの家の出ということになる。
片や、Sawaコーポレーションという日本屈指の会社の御曹司。
片や、日本を代表する茶道界のドン。笹原流家元の一人娘。
そう。
肩書きだけを見れば、十分丁寧なもてなしを受けるだろうが、外見がどこを見てもお互い20代前半。
一人は下手すれば高校生に間違われてもおかしくない容姿だ。
九重の名前はすごいな、とさすがに思った。