ベイビー&ベイビー
第6話
第6話
「……明日香ちゃん」
「なんでしょう? 拓海くん」
カコーン、とししおどしの音が響き渡る有名料亭での一室。
俺は、混乱していた。
ああ零しちゃったわねぇ、と俺が零してしまった冷酒をお手拭でささっと拭く明日香。
そのしぐさは、先ほどその口から問題発言をしたとは思えないぐらいに冷静だった。
「……どういうこと?」
「え? それはこちらが聞いているんだけど?」
「いや……そうなんだろうけど」
俺は急に頭が痛くなって、米神に手を置く。
一方の明日香は、デザートに手をつけながら俺を見てニコニコと笑う。
「……セフレ……とは?」
「えっとセックスフレンドの略だよね?」
「いや、意味を聞きたいわけじゃなくて……ね?」
ますます痛くなる頭をなんとか正常に持たせ、俺は目の前の明日香と対峙した。
俺の動揺をみて、明日香は神妙な顔でデザートを食べる手を止めた。
「さっきの素敵な女の人」
「え?」
「拓海くんを背後から抱きしめていた女の人、いたでしょ?」
「あ、ああ」
きっと真理子のことを言っているのだろう。
誰もいないと思っていた真理子は俺にそんなふうにしたのだろう。
普段の彼女なら、そんなへまはしないはずだから。
あれを見られていたのか、と俺はこっそりとため息を零した。
「あのとき、拓海君言ってたよ? 今夜、どう? って」
「……」