ベイビー&ベイビー
俺も恋人は作らない主義だ。
後々面倒なことにならないとも限らないし。
しかし、俺も生理的に女が欲しくなるときがある。
そんなときは真理子を誘う。
お互いそういう意味では持ちつもたれつな関係とも言えるだろう。
しかし、彼女は恋愛小説家。
一度聞いたことがある。恋愛してなくても小説は書けるのか、と。
そうしたら真理子は肩をすくめた。
「小説を書いている私はもう一人の私。もう一人の私はちゃんとここの中で恋愛しているの。だから書けるのよ」
そういって頭を指差した。
なかなかに器用な頭だ。
使い分け。
そういう意味では俺もしていると思う。
会社では、可愛い弟タイプを演じている。
どこでどうなったか、あんなに厳つい顔の父親とクールビューティーと名高い母親から突然変異か、と疑いたくなるぐらい自分の顔はベビーフェイスだ。
28才だというのに、今だ20代前半だと思っている人は数知れず。
だが、それでいい。
この顔だから、裏の顔を持っているということを疑うことはない。