ベイビー&ベイビー
「拓海、あなたさ……大物逃がしたかもよ?」
「は?」
「だから、子猫ちゃん。拓海の一番の女になる予定の子だったかもよ?」
「ありえない」
俺は速攻、真理子の意見を蹴散らした。
俺は恋愛をしない。してもしかたがないと思っている。
恋や愛に夢を描くのはもうやめたんだ。
それに、相手はあの明日香だ。
一歩間違えれば高校生でも通じそうな明日香。
俺は断じてロリコンではない。
どちらかというと、今まで年上の女ばかりに手を出していた。
それが俺の好みな女なわけだし。
絶対にありえない。
俺は反対に真理子に向かって、たまらないとばかりに噴出した。
「真理子さん、ありえないジョークをありがとう」
「あら、私、本気で言ったんだけど?」
そういって肩を竦める真理子。
ありえない、と再び言う俺に真理子はもうそのことを口にすることはなかった。
「さ、今日はもう帰った、帰った」
「……今日は真理子さんを抱きたい」
そういって真理子の項に唇を這わせたのだが、真理子に翻された。
不満を顔に貼り付けて、真理子を見つめるとニヤリと口角をあげた。
「いつものストレス発散なら付き合ってあげるけど、今日は違うでしょ?」
「え?」
「子猫ちゃんの代わりをするぐらいなら、やめとくわ」
「馬鹿なこと言ってるな、真理子さんは」
再びリベンジとばかりに真理子の体に手を滑らせたが、叩かれた。
「今日はなし。また出直していらっしゃい」
そういって作り笑顔の真理子。
こんな表情をした真理子には何を言っても無駄だ。
俺はため息をつくと、そのまま背を向けたまま手をあげて真理子の事務所を後にしようとした。