ベイビー&ベイビー
「拓海くん」
「……谷さん、なんか出たの?」
僕は並べられているカードを一通り見てみる。
が、なんのことだかさっぱりわからない。目の前のさやかを見ると、なんだかとても難しい顔をしている。
なにか不吉なカードでも出ているのだろうか。
それとも、俺の本性がバレたか?
どちらにしても、俺にとって都合の悪いことに違いない。
さやかの占いの結果を、静かに待っていると、さやかは突然タロットカードをしまいだした。
「やっぱりやめとく」
「え? やめとくって。谷さんが勝手にやりだしたんでしょ? それも、なにか出たんじゃないの?」
「出たには出たけど……。やるまでもなかったわ」
「……どういうこと?」
全くもって意味が分からない。
さやかは、自分が俺のことを占いたいと言い出し、勝手に始めたのだ。
そして、勝手にやめるとは。
訳が分からない。
「谷さん、さすがの僕もこれには怒るよ?」
「……だよね。うん、ごめん拓海くん」
「いや……そう素直に謝られると、こちらとしても何もいえなくなってしまうけど」
箸をおいて、目の前のさやかを見てみる。
バツの悪そうな顔をしたあと。
実はね、とさやかは無表情な顔で俺を見つめた。
「占いなんて口実かな。でも、やっぱり私のタロットは当たるわね、うん」
「は?」
ますますさやかが言おうとしていることが読めない。
俺が首を傾げていると、さやかはコップに注がれていた水を飲み干した。
「拓海くんに忠告してあげようかと思ってたんだ」
「……忠告?」
「そ、忠告よ。今、拓海くんの知らないところで色々なことが起こっているのよね」
「どういうこと?」
俺が怪訝そうな顔をして、さやかを見つめる。
一方のさやかも困り顔だ。
「そして、実は結末もわかってる。一応、今、念のためにタロットで占ってみたけど、私が知っている結末と同じ結果が出た」
「……なんだかなぞなぞみたいだね」
「そうね、拓海くんにとってはなぞなぞみたいよね。なーんにも知らないんだもの」
そういうさやかの口調は、俺を馬鹿にしているようでカチンと来た。
が、会社でそんな顔は見せれない。
冷静に、と自分に言い聞かせる。
そんな俺の態度など見てみぬふりをして、さやかは俺になぞなぞの答えを導かせようと必死の様子だ。
「拓海くんが知らない、でも拓海くんにとって何かが変わる出来事が内々で行われてる。その出来事とかは私の口からは言えない」
「……」
「ただ、言えることはひとつ」
「……ひとつ?」
さやかは何かを俺に伝えようとしていることだけはわかる。
その出来事がなになのかはわからない、が。