ベイビー&ベイビー
第12話
第12話
結局。
俺はいつもの行きつけのバーに行くこともなく、真理子に会うわけでもなく。
ただ、花見を毎年する公園のベンチにいた。
ここは、会社とは目と鼻の先、だ。
高層ビルに囲まれた、この緑地公園は昼はオフィスで働く人たちがランチをとり、反対に夜は閑散としている。
オフィス街だからだろう。
夜のこのあたりは、一気に静かになる。
時折、ランニングをしている人が通るだけで静かなものだ。
あの、花見の頃の賑わいを思うと寂しくも感じる。
あの時は、あたり一面桜の海だった。
しかし今はすっかり青々と葉が生い茂り、あの時の華やかさとは一変、新緑の波になっていた。
俺は、コンビニで買った缶ビールをグイッと飲み干した。
喉にピリッと刺激が走る。
いつもなら美味しいと感じる、その喉腰も今は違う痛みに感じる。
かなり俺は今、動揺している。
それは先ほど会社で見た週刊誌のせいだろう。
いや、もっと前からかもしれない。
そう、一週間前。
明日香とバッタリと九重代議士のパーティーで出くわした時から何もかもが始まっていたように思う。
あれから俺は、どうも心が乱れているように思う。
今までにこんなことなどなかった。
なのに、何故。
俺はこうまで動揺しなくてはいけないのだろうか。
しかし、どういうことなのだろう。
解せない点がいくつかある。
もちろんあの週刊誌の記事をすべて鵜呑みにするわけではないが、あの記事には前々から付き合っていたと書かれていた。
明日香はあの男と本当に付き合っていたのだろうか。
27歳だ。
男の一人や二人、過去にいたっておかしくはない。
おかしくはないのだが、明日香の性格を考えると付き合っている男がいるのに、俺にセフレになってほしいなどと頼むわけがない。
俺にセフレになってほしい、そう明日香が本心から言っているとすれば、あの記事はでっち上げだったということになる。
しかし、火のないところに煙は立たない。
それに、あの写真の女性は間違いなく明日香だと思う。
だとしたら、木ノ下涼太郎と知り合いだというのは確かだ。
それが、恋人同士かどうかというのが微妙なところだが。
もし、あの記事が本当だとしたら。
何故だ。
俺にあんなことを言ったのは。
あのとんでもない爆弾発言をしたときのことを思い出す。