ベイビー&ベイビー
第15話
第15話
俺は適当に話をごまかし、親父からの電話を切った。
そして親父が言っていた過去の恋愛のことを思い出す。
あの恋愛は、沢という家から抜け出したいと思っていた俺に、どこへいっても沢という家がついてくるというのを思い知らされた恋愛だった。
結果、家や仕事がらみだった故に、親父の耳にもはいってしまった。
親父もうすうす気がついていたのだろう。
俺が、あれからまともな恋愛をしなくなってしまった、ということに……。
あれは確か、俺が大学に入学したての頃だった。
木内早苗。
彼女に出会ったのは。
早苗の実家は、建設会社だ。
そこそこの大きさを誇っていて、うちの支社ビル建設の候補会社に入っていた。
そう、候補に入っていたのだ。
しかし、まだ高校出てすぐの俺に、そんな内情など知るわけもなかった。
それがすべての始まりだった。
俺は実家に内緒でバイトをしていた。沢の息がかかっていない所で一度働いてみたい。
そう、ずっと願っていたことだったから。
職種はなんでもよかった。
ただ、沢拓海個人として雇ってくれるところならどこでもかまわなかった。
そしてバイトとして働くことになったのは、パース建設会社の裏方事務だ。
コピーをとったり、資料を作ったり。
いわゆる雑用だ。
それでも、俺は始めてのバイトが楽しくてしかたがなかった。
大学生になったばかりで、色んなものが目新しい。
環境がガラリと変わって、自分自身浮き足立っていたことは否めない。
俺の教育係についてくれたのが、早苗だった。
俺より4つ上の25歳。
スラリとした容姿に、黒い豊かな髪。
その髪は少しだけウェーブがかかっていて、思わず触りたくなるぐらいに綺麗な髪だった。
顔はどちらかというと、かわいい系。
にっこりと笑うとえくぼが出来て、思わず年上だということを忘れそうになるぐらいに可愛い人だった。
周りにもすごく好かれていて、部署でもとても人気のある早苗。
バイトの俺にさえも、とても気遣ってくれて。
すごく頼りになる人だった。
俺は困ったことがあったら、すぐに早苗に聞くし、早苗も俺を気にかけてくれていたと思う。
毎日顔を合わせて、一日数時間の間だけ同じ空間で、同じ時を過ごす。
それだけのことなのに、俺はすっかり嵌ってしまっていた。
早苗という女性に。
俺は大学に入ってからも、もてていたと思う。いろんな女に告白をされていたから。
だけど、俺はすべて断っていた。
なぜなら、俺の心にはすでに早苗がいたからだ。
バイトとして働き出して半年。
俺は意を決して早苗に告白をした。人生で初めての告白だった。
一瞬驚いた顔をした早苗だったが、困惑した顔で俺に言った。
「4つも年上だけど……いいの?」
そういう早苗はとても可愛かった。
もちろん、年齢なんて関係なかった。俺は早苗のことが好きだったから。
俺は適当に話をごまかし、親父からの電話を切った。
そして親父が言っていた過去の恋愛のことを思い出す。
あの恋愛は、沢という家から抜け出したいと思っていた俺に、どこへいっても沢という家がついてくるというのを思い知らされた恋愛だった。
結果、家や仕事がらみだった故に、親父の耳にもはいってしまった。
親父もうすうす気がついていたのだろう。
俺が、あれからまともな恋愛をしなくなってしまった、ということに……。
あれは確か、俺が大学に入学したての頃だった。
木内早苗。
彼女に出会ったのは。
早苗の実家は、建設会社だ。
そこそこの大きさを誇っていて、うちの支社ビル建設の候補会社に入っていた。
そう、候補に入っていたのだ。
しかし、まだ高校出てすぐの俺に、そんな内情など知るわけもなかった。
それがすべての始まりだった。
俺は実家に内緒でバイトをしていた。沢の息がかかっていない所で一度働いてみたい。
そう、ずっと願っていたことだったから。
職種はなんでもよかった。
ただ、沢拓海個人として雇ってくれるところならどこでもかまわなかった。
そしてバイトとして働くことになったのは、パース建設会社の裏方事務だ。
コピーをとったり、資料を作ったり。
いわゆる雑用だ。
それでも、俺は始めてのバイトが楽しくてしかたがなかった。
大学生になったばかりで、色んなものが目新しい。
環境がガラリと変わって、自分自身浮き足立っていたことは否めない。
俺の教育係についてくれたのが、早苗だった。
俺より4つ上の25歳。
スラリとした容姿に、黒い豊かな髪。
その髪は少しだけウェーブがかかっていて、思わず触りたくなるぐらいに綺麗な髪だった。
顔はどちらかというと、かわいい系。
にっこりと笑うとえくぼが出来て、思わず年上だということを忘れそうになるぐらいに可愛い人だった。
周りにもすごく好かれていて、部署でもとても人気のある早苗。
バイトの俺にさえも、とても気遣ってくれて。
すごく頼りになる人だった。
俺は困ったことがあったら、すぐに早苗に聞くし、早苗も俺を気にかけてくれていたと思う。
毎日顔を合わせて、一日数時間の間だけ同じ空間で、同じ時を過ごす。
それだけのことなのに、俺はすっかり嵌ってしまっていた。
早苗という女性に。
俺は大学に入ってからも、もてていたと思う。いろんな女に告白をされていたから。
だけど、俺はすべて断っていた。
なぜなら、俺の心にはすでに早苗がいたからだ。
バイトとして働き出して半年。
俺は意を決して早苗に告白をした。人生で初めての告白だった。
一瞬驚いた顔をした早苗だったが、困惑した顔で俺に言った。
「4つも年上だけど……いいの?」
そういう早苗はとても可愛かった。
もちろん、年齢なんて関係なかった。俺は早苗のことが好きだったから。