ベイビー&ベイビー
「当たり前よ、拓海くん。花見といえば、三色団子。三色団子といえば花見よ」
「やっぱり今年も買ったんだねぇ」
「なに? 拓海くん。大丈夫よ、今年も一番上のひと玉は拓海くんにあげるから。食べる?」
食べる? と聞いておきながら、すでにひと玉を抜き取って紙皿に乗せ、僕に差し出した。
食べろ、というお達しらしい。
毎年のことだ。
俺のほうもこれは花見になくてはならないものとなっている。
いわゆる風物詩ってやつだ。
俺は明日香から、ためらいもなく団子を受け取ると、明日香とともに団子を食べだした。
「明日香ちゃんに拓海くん。今年も二人して可愛いことやってるわね」
「あ、さやかちゃん」
振り向くと突然フラッシュが光った。
デジカメを手にした谷 さやかが面白そうに笑っている。
「谷さんか。毎年あきもせずに僕たちのこと写真に収めているねぇ」
「ああ、まあね。きっとそのうち必要になるかもしれないし」
「どういうこと?」
「それは内緒。タロットの神がそう囁いただけよ?」
「……怖いから聞くのやめておくよ」
そのほうがいいかもね、とニヤリと笑うさやか。
谷さやか。彼女も僕たちと同期。この3人が営業一課に配属されてから、気がつけば5年の年月がたとうとしている。
早いものだ。