ベイビー&ベイビー
番外編SS「ベビー&ベイビー」
そろそろとは、思っていたんだ。
ただ、なかなかタイミングが掴めなかっただけ。
それだけなんだけどね。
俺は出来上がったばかりのリングを見て、少しだけ苦笑した。
ベビー&ベイビー
「実はね、拓海君」
「どうしたの?明日香ちゃん」
突然正座したかと思うと、なんだか真面目そうな表情で俺をじっと見つめる明日香ちゃん。
それまでソファーに寝転んでいた俺だったが、そんな雰囲気じゃないことを感じとり、俺は起き上がって明日香ちゃんの顔をじっと見つめた。
「……」
一向に口を開こうとしない明日香ちゃん。
ますます嫌な予感ばかりが俺の脳裏に浮かんでは消えていく。
まさか、別れたいとか。
まさか、距離をおきたいとか。
まさか、家で反対されたとか……。
万が一、別れたい。
そういわれたって、別れたくないし、別れない。
距離をおきたいといわれたって、おくつもりもなければ、離すつもりもない。
明日香ちゃんのご両親&兄が反対したなら、土下座でもしてお願いしにいくつもりだし。
まさか…。
俺は一番最悪なパターンを頭に思い浮かべた。
他に好きな男が出来たから別れて欲しい。
そんなことを言われた暁には、その男をぶん殴ってしまうかもしれない。
その男を忘れてくれ、そういって明日香ちゃんを俺のマンションに閉じ込めてしまうかもしれない。
そんな危ない考えさえも過ぎる。
まだ口を開かず、険しい表情を浮かべたままの明日香ちゃん。
俺は色んな最悪なパターンを思い浮かべながらも、次にどう行動しようかと頭の中で考えを巡らせる。
少しの沈黙の後。
やっと意を決したのか。
明日香ちゃんが顔をあげて、俺の顔をまっすぐと見つめた。
「あのね、拓海君!!」
「……」
「あ、あのね……実は……」
一瞬息を飲んだ。
そして、次に来るであろう明日香ちゃんの言葉に祈りをこめる。
が、どうしてもこの沈黙に耐え切れなくなった俺は、明日香ちゃんが言葉を発する前に叫んだ。