ベイビー&ベイビー
「この写真、欲しがる人たくさんいるのよ?」
「……単独で撮ったほうがいいんじゃない? 明日香ちゃんの写真欲しがる男、結構いるでしょ? それに男が写っていたら価値下がるんじゃない?」
「そうでもないわよ」
そう言い切るさやか。
一方の明日香は今だ三色団子と格闘中だ。
口いっぱいに詰め込んだまま、俺とさやかの会話に耳を傾けている。
今はとても話に加われないらしい。団子で口がいっぱいなのだから。
「アンタたちは二人セットなんだから。一人でもかけちゃったら価値が下がるってもんなのよ」
「……意味がわからない」
「ベビーフェイスの営業一課のマスコット的存在の川野拓海と笹原明日香。二人が一緒だからいいのよ。見てると和むから、なんていうの? ペットみたいっていうか」
「……」
「癒しの存在として、会社では貴重な存在よ。アンタたち二人で和んでいるの見ていると、外野も和むわけよ」
「ふーん」
「会社のオアシス的存在なわけよ、アンタたちは。仕事で疲れたときに、アンタたちのおっとり加減を見て和む。疲れがとれるわよ」
なんというか。
そんなふうに見られていたのか、と今更ながらにさやかの言葉を聞いて苦笑した。
「アンタたち、縁側でお茶すすっている図っていうのがぴったり似合うしねぇ」
キヒヒと下品な笑いを零すさやか。
さやかは見た目はクールビューティーといった感じなのに中身がこんな変わり者だ。
人のことは言えないが、彼女の二面性には舌を巻く。
眼鏡が彼女のクールさを引き立てていて、なかなかにキャリアウーマンな感じがする。
しかし、中身はというと結構な変わり者だ。
黙っていればいいのに、という感じのさやか。
タロット占いが得意で、よく会社でも頼まれて占っているほどの腕前だ。
営業一課の同期三人。
なかなかに個性が強い3人で、周りからもなにかと注目されているようだ。