夏と秋の間で・甲
「・・・・・まいったなぁ~。」
思わず、口に出ていた。
「何が?」
しまった。
「あ・・・いや、別にたいしたことじゃねぇよ。」
本当は、それなりにたいした問題ではあるのだが、それを亜紀に言っても仕方がない。
大場さんに誤解されたくない程度の理由で、今更こいつと縁が切れるはずもない。
それでも、できる限りこいつと一緒にいるところを大場さんには見られたくはないけど・・・。
「聞こえるように言っておいて、それはないんじゃない?」
確かに・・・。
「でも、実際たいしたことじゃねぇよ。」
「いいから、聞かせてよ。気になるじゃん。」
・・・・・・そういわれると、後には引けない。
なんとかして誤魔化そうとも考えたが、いい方法が思いつかなかった。
「いや・・・んじゃ、話すけどさ・・・。」
そう言って望巳は、昨日の早月さんとの会話のコトを話した。
もちろん、色々厄介なところは誤魔化したり、省略したりもしたが、それでも亜紀は深くつっこむこともなく、一々うなずいて聞いてくれた。