夏と秋の間で・甲
「なるほど・・・。望巳が惚れている相手は大場さんではなく、私だと・・・しかも、大場さんまでもそう思っている・・・というわけだね?」



「まぁ、そんなところだな?お前もいい迷惑だよな?」



 こいつにだって、好きな男がいるというのに、そんな噂が女子の間に広まったら、相手の男がなんて思うことか・・・。



「いや・・・私はそうでもないかな・・・・?」



 それは、油断すれば聞き逃しそうな小さな声だったが、反響しやすい場所だったためか、確実に望巳の耳に届いた。



「え?なんで?」



 そんな噂、お互いの利益にもならないのに・・・・。



「あ、いや・・・別に・・・。だって、その噂だとあくまで害があるのは、望巳だけだし、私にとっては、別になんともないというか・・・。そんなこと否定すればすむだけだし・・・。」



 何を慌てているんだ、こいつは?



「あのなぁ~・・・。」



「まぁまぁ・・・それで、どうするの?」



「なにが?」



「噂だよ。そんなふうに大場さんに思われていたんじゃ、望巳もやりにくいでしょ?私と縁を切る?」



 あ、こいつ無理やり話題をすりかえやがったな。



 まぁいいけど・・・・。



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